なぜ薬指と呼ぶ?別名や結婚指輪に関する伝説も……

ふむ、もう少し色を足すか。

ん? カエデ、おめかし中?

アイラインなんかひいちゃって。

珍しいね、そういう風にメイクしてる姿ってあんまし見ない光景かも。 

そうか?

まあ、それもそうか(サッサッ、ぬりぬり)。

(集中してるから、こっちのいってることスルーされてるな)

おーい、これだけ聞いて良い?

(ヌリヌリ)

どうぞ。

なんで指で塗ってるの?

リップとか使わないの?

(ヌリヌリ)

そういう化粧道具を使っても別に良いんだが、私はたいがいこうしている。

大体、指を使って化粧するのも別におかしなことではないからな。

そうなの?

(とりあえず目元はこんなものか)

それとこういう時に使用する指は薬指だ。

なんで?

(次は口元だな)

それを説明する前になぜ薬指と呼ばれるか、その話から知っておいた方が良いと思うぞ。

え、うん……。

(メイク中のタイミングで聞いたボクも悪いけど、話半分の会話になっててなんかつまんないな……)

そのまま「薬」が由来

woman showing her silver-colored ring
Photo by Andrik Langfield on Unsplash

古くから、薬を溶かしてつける際や、粉薬をなめる際に使われる指なので、薬指の名が付いたとされている。

なぜ薬指が使われるかについて、薬指はほかの指に比べ日常的に使われることがあまりなく、清潔さが保たれている指といわれているから。

つまり使用頻度から推察された伝統的な考え方で、衛生的にも薬剤に直接触れるのに適しているというワケである。

でも……

あのさ、ちょっとツッコみたいことあるんだけど。

どうぞ。

だが、あまり無粋なことはいうんじゃないぞ。

パソコンのキーボード操作とかでめっちゃ使ってるよね、薬指。

あまり動かさなくても、スマホとかゲームパッド持ってる時は普通に添えてるし。

色々ベタベタ触ってるから、別にキレイな指でもないんじゃない?

由来が生まれた時代にはパソコンもスマホもないからな。

ツッコみたいのは分かるが、文明が発達した近年に出来た呼び名ではないはずだ。

昔は使用頻度が少ない指だったという扱いなだけで、今の時代に当てはまるとは限らないだろう。

揚げ足取りだね。

どうもすいませーん。

艶やかな別名

薬指は紅差し指(べにさしゆび)とも呼ばれるぞ。

昔から口紅(くちべに)を塗る時は、薬指にとって使うことから、その名が付いたといわれているんだ。

それに紅が入った器にも細工がほどこされた貝殻を用いるなど、高級で趣向をこらした品物があったんだぞ。

レトロなおしゃれ感がただよう話だね!

リップで塗るよりどことなく色気が感じられるっていうか、昔の人がそういう器を使って塗ってる姿自体が絵になりそう。

実際、浮世絵にも描かれているしな。

ちなみに江戸時代にはすでにほほ紅(チーク)や目弾き(めはじき・つまりアイラインだな)爪紅(マニキュア)が使われていたんだ。

化粧の仕方が描かれた本などもあったんだぞ。

その時代からメイクアップ文化って出来上がってたんだね。

紅差しに薬指が使われる理由も、先ほどの「ほかの指と比べてあまり使わず清潔」という話からだ。

それに化粧には細やかな指の運びが必要だからな。

紅差し指はそういう動作にも適しているということだ。

薬指に結婚指輪をはめるワケ

古代ギリシャでは、薬指から伸びた血管が心臓につながってるっていう言い伝えがあって、神聖な指ってみられてたんだって。

そこに指輪をはめて、永遠の愛を誓いあうって話さ(ちょっとムリヤリ感もあるけど)。

それに心臓は感情を司る場所って考え方もあるみたいで、指輪をそこにはめるのは、恋人同士が感情=心を通じ合わせるって行いみたいなものなんだよね。

神聖というからには、神の前で互いが愛を誓い合うということでもあるのかもな。

そういうこと。

あと、血管は※愛の静脈って呼ばれていて、そのことも結婚指輪や婚約指輪を付ける理由になったんじゃないかと思うよ。

※ラテン語ではvena amoris(ヴェナアモリス)という。ロマンティックな考え方だが、そういうロマンティックな血管が心臓へと実際に伸びているワケではない。

まとめ

①薬指は「清潔」とされ薬を塗るために使われたため、名が付いた。紅を塗る指としても使われ「紅差し指」とも呼ばれる

②昔は薬指が使われる頻度が低く清潔だったが、今ではキーボード操作などでよく使われるようになり、当時の考え方と異なる

③薬指の血管が心臓に通じると信じられ、愛や感情の象徴として結婚指輪をはめる習慣ができた

ほかの指なら分かりやすい名がついているが、薬指だけは名の由来が分からないという者は少なくないはずだぞ。

うん、そうだね(でも猫なボクにはあまり関係なさそうな雑学だな……)。

面白いのは自らの身体の、それも普段当たり前に使っている箇所にも関わらず、その名の由来までは知らない者がほとんどということだ。

もっとも私にだって分からないものが大半だから、人様のことはいえないが。

たとえばヒラメ筋や仙骨といった変わった名称のものに興味を持ち、調べてみるのも悪いことではないだろう。

ま、それはおいおいだね。

んじゃカエデ、メイクアップを続けて下さい。

ありがとう。

化粧道具も使い慣れておかないと、変装する時に困るからな。

これもあくまで忍びとしての修練だ。

あ、そういうこと。

でもこの時代で、なんのために変装するんだか。

あ、お役目ってやつで、どこかに潜入して情報あつめたり?

ふふっ、ナイショ!

ナイショ?

了。

参考資料

国立国会図書館 本の万華鏡  第29回 めーきゃっぷ今昔-江戸から昭和の化粧文化- 第1章 江戸時代の化粧 https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/29/1.html(参照 2024-10-25)

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