残り少ないものは出し、すぐ使うとして……。
カエデ、何してんの?
お、コチョンどのか。
いやなに、料理で使う小麦粉類を入れ替えしていたところだ。
すまないが、ちょっと後ろの袋とってくれ。
……コレって食品保存用のフリーザーバック?
意外にこういうアイテム使ってるんだね。
この中に小麦粉の袋入れてるんだ?
それな、実に重宝しているんだ。
粉物はそれこそ袋ごと入れて保存出来るからな。
大きさもLやMで使い分けられるし。
バックに薄力粉って書いてる……。
ほかに中力粉・強力粉もあるね。
ね、小麦粉って何で三種類あるんだろうね?
使っている麦や用途がちがうからだ。
そうなんだ?
それとさ、薄力粉はともかく、中力粉と強力粉って何につかうの?
(強力って、ものすごい堅いってことかな)
そういう話は作業しつつ、まとめて説明してやろう。
入れ替えするものがまだほかにあるからな。
あ、そこの台とってくれ、棚の上までは流石に手が届かないからな。
上に乗るのね。
んしょんしょ……。
はいどーぞ。
ありがとう。
よっ、と。
(あ、見えた。今日は水玉模様か)
小麦粉は大まかに3種類
小麦粉は小麦の中心部の胚乳(はいにゅう)と呼ばれる部分をひいて、粉末にしたもので、薄力・中力・強力粉の3種類がある。
各粉は、薄力が軟質小麦、強力が硬質小麦、中力は薄力と強力の中間の特性を持つ中間質小麦が、それぞれの原料として使われる。
3種類の小麦粉があるのは、普段料理をしない人でも分かるよね。
食い専門のボクでも分かるもん。
原料の小麦のちがいや、それぞれの特性までをはっきり分かる者は、そうそう居ないだろう。
もっともプロの調理人や、パンやケーキ職人など小麦粉を日常的に使う者であれば、常識の範囲だと思うが……。
それぞれの用途
各小麦粉の用途に関しては簡単な図表にしておいたぞ。
種類 | 用途(あくまで一部) |
薄力 | 唐揚げ・天ぷら・ケーキ・お菓子・生パスタ・クッキー |
中力 | うどん・たこ焼き・お好み焼き |
強力 | パン・ピザ・餃子の皮・中華麺 |
薄力粉で作るものがやっぱ多いね。
唐揚げとかみんな作りそうだし。
確かに用途は幅広く、一番消費されやすいだろうな。
だが手作り餃子を作るなら、強力粉もそれなりに使われる。
中力粉はほかの2つに比べあまり馴染みがないが、うどんに使われることもあって、うどん粉とも呼ばれるな。
各粉はタンパク質の量が異なる
それぞれの小麦粉はタンパク質の量がちがうんだ。
量は薄力<中力<強力の順で多く含まれる。
ちなみにこのタンパク質はグルテンともいい、おもに小麦に含まれているんだぞ。
それ知ってる。
※グルテンフリーとかいうもんね!
※小麦粉を一定レベルまで抑えた、または一切含まない(摂取しない)ライフスタイルや食材などを指す。
※グルテンはそのままの状態ではなく、小麦粉を水と混ぜてこねることでできるんだ。
薄力粉の場合はグルテンの量が一番少ないから、弾力や粘り気も少なくやわらかいぞ。
※正確には小麦中のたんぱく質(グリアジンとグルテニン)を水と混ざり、これを練ることで網目状の構造を形成しグルテンが生成する。そう書くと小難しいので、簡単に覚えるにはカエデの説明でも充分だと思われる。
強力粉はその反対で量が多いから、弾力と粘りが強いんだね(てっきりガチガチになると思ったけど)。
コシが強いっていうのかな?
そうだ。
だから、中華麺(ラーメン)などを作るのに適しているということだな。
いうまでもないが、中力粉は薄力、強力の中間の特徴を持つ。
だから弾力も粘り気も、薄力と強力のあいだくらいになるぞ。
ほかの小麦粉
パスタとかマカロニに使うやつはデュラム粉とかいうやつだよね。
デュラムセモリナだな。
デュラムとは小麦の種類。
セモリナは粗挽きされた小麦粉というイタリア語らしい。
つまりデュラムセモリナとは、デュラム麦を粗挽き粉にしたものということだな。
おお! キャラに似合わない説明!
すごいね、カエデ。
パスタとかも作る様になったの?
と、いうことではないが、知識の肥やしとして最近覚えたんだ。
実際に使うかどうかは分からないが。
ほかにも全粒粉という小麦粉もあるぞ。
なんか聞いたことあるね。
全粒粉パンとか。
まさしくそれだ。
全粒粉とは通常の小麦粉とはちがい、小麦粒をまるごとひいたものだ。
通常の粉なら、胚乳以外のものは取り除かれるが、こちらの場合、表皮や胚芽もあますことなく使われる。
そのため、粉の色は白でなくやや茶色がかっているんだ。
ムダなくって感じだね!
なんか栄養とかも普通の小麦粉よりありそう。
確かに食物繊維などは通常の小麦粉より多いようだぞ。
鉄分などのミネラルも豊富なようだ。
何より味が香ばしく、これを使った料理(それこそパンなどだな)は歯ごたえもあるゆえ、好む者もある程度居るだろう。
聞けば良いことだらけじゃん。
だが、これは好みだからな。
そば粉のみの十割蕎麦が好きな者も居れば、小麦粉とそば粉を混ぜた二八蕎麦が好きな者も居る。
そういうことだ。
分かったような分からない様な……。
全粒粉にはクセがあるってことかな。
香ばしさとは、人によりえぐみにもなるからな。
こればかりは実食にてそれぞれが美味いと思う方が正解だが(当たり前のことなのだがな)。
それとは別に食物繊維が多いものを摂り過ぎると、お腹がゆるくなって「ピーピー」になるぞ。
あ、ピーピーはヤダ。
美味しくても食べ過ぎ注意ってやつだね。
小麦粉以外の粉の話
小麦粉以外では米粉・片栗粉・上新粉・白玉粉などがあるぞ。
米粉はお米の粉だから分かるとして。
上新粉ってお団子のやつ?
そうだ、団子のほかにかしわ餅やちまきにも使われる。
原料は我々が普段食べる米、つまりうるち米だ。
一方で白玉粉にはもち米が使われているぞ。
一応、米の種類がちがってるんだね。
どちらも米を材料にしているため、広い意味では米粉の一種といえるな。
上新粉は、米を洗って乾燥させた後、粉砕し、熱処理などを施して作られる。
一方、白玉粉は、米を水に浸して細かくすりつぶし、その後、圧力をかけて脱水する。
最終的には、どちらも乾燥させて製品化されるんだ。
これはかなり端折った説明だから、細かい部分で不足や誤りがあるかもしれないが、大まかな製法はこんな感じだな。
手間がかかってるっぽいね。
同じような原料でも、ぜんぜんちがうんだなあ。
片栗粉は、おもにあんかけのとろみづけで使われることも多いな。
原料はジャガイモ、正確にはそこから採れるでんぷんだ。
だが昔の片栗粉は文字通り、カタクリ(ユリ科の花)の球根から作られていたんだぞ。
だからカタクリ粉っていうのかな?
それがなぜジャガイモに?
江戸時代からの話だが、片栗粉は採れる量が少ないものの、消化にも良いとされ、重宝されていた。
だが大量に採取された結果、江戸末期にはカタクリの数が少なくなってしまった。
そこで明治以降、北海道で大量に採れ、安値で買えるじゃがいも(馬鈴薯)から粉が作られる様になったんだ。
でんぷんの性質がカタクリのものと似ているからといわれているぞ。
そういうことなのね。
名前だけが昔のなごりってやつで、そのまま使われているのかな。
私もそう思っている。
余談だが、料理によっては小麦粉の代わりに、片栗粉で代用するというのも手だ。
良例が唐揚げだな。
唐揚げを片栗粉のみで作れば、焦げ付きづらく、サクサクした食感のものが出来るぞ。
おー唐揚げ!
王道かつ定番だね。
ジュルリ……。
(あ、よだれ垂らした)
小麦粉と合わせて使うことで、さらに異なる食感や風味になるし、分量の加減によって千差万別だ。
まず小麦粉、次に片栗粉をまぶして作るのもおススメだが、最初から両方混ぜ合わせたものをまぶしても、まったくちがうものが出来る。
自分好みの唐揚げを作るには色々試すのが良いぞ。
まとめ
①小麦粉には大まかに薄力・中力・強力粉の三種があり、使われている麦の種類がちがう(薄力→軟質小麦・強力→硬質小麦、中力→中間質小麦という種類)。
②強力>中力>薄力とタンパク質(グルテン)の量がちがうことも特徴。またそれぞれの用途も異なる。
③強力粉は粗く、グルテンによる粘り気が強い(パンや中華麺に向く)薄力粉は粒が細かく、粘り気が少ない(天ぷら・唐揚げ・お菓子・ケーキに向く)。中力粉はその中間の特徴を持ち、うどんに使われることからうどん粉とも呼ばれる。
小麦粉はほかにもパスタやマカロニ用のデュラム粉や、全粒粉など特殊な物もあったな。
小麦粉以外の片栗粉などについての話は、文をさかのぼって見て欲しいところだ。
……さて、作業終了だ。
手伝ってくれてありがとう。
どういたしまして!
さあ、なんか作ってよ。
やれやれ、どうりで素直に手を貸すと思ったらコレか……。
無報酬で働くほどボクは甘くないよ。
さあ、なんか食べさせてよ!
さあさあ!!
(圧すごいな)
分かった。
要望はあるか?
唐揚げ!
話がちょっと出てから、食べたくなっちゃった!
やはりな、分かった。
……それもそうだが、コチョンどのに粉が付いているな。
白ネコとまではいかないが、所々真っ白だぞ。
袋ごと入れ替えたのに、なんでこんなことに?
さっき手伝ってる時、開封済みの粉うっかり落としちゃって。
少し残った中身がバフっ!ってなったから。
どうりでそこの床も白くなってるワケだ。
唐揚げは掃除が済むまでお預けだな。
身体は拭いてやるが、そこの床はコチョンどのが責任もって掃除しておくように。
えー? めんどくさ……
イヤならかまわないぞ。
もっと粉まみれになって、鶏と一緒に揚げられても構わないならな。
ちょうど補充が終わったから、小麦粉も片栗粉も充分にあるぞ。
ヒーッ! やりますやります!!
許してください!!
素直でよーし!
了。
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