カエデーッ!!
そこそこ!!
そこにゲジが居るよー!!
ワシャワシャ……
なにかと思えば……たかがゲジゲジ一匹でおおげさな。
毎年見かけるだろうに。
確かにそうだけど……
いやいや、そんなこといってる場合じゃないって!
はやく捕まえてよー!
分かったから少し落ち着け。
……よっ……と、ほれ捕まえたぞ。
ワシャワシャワシャ!
こら、ちゃんと外に逃がしてやるから、あまり動くな。
(……うわー、ワシャワシャいってる、きんもちわりー……)
それよりさ、ソレ素手で捕まえられるっていうのもね。
豪傑~。
こういうのを豪傑とは言わないと思うぞ。
特に害がないのが分かっているだけだ。
それよりむしろ……そうか。
何?
(なんかイヤな予感がするなあ)
今少し、逃がすのは保留にする。
ちょっと「コイツ」についての話でもしよう。
ただの嫌われ虫のまま終わっても、少し哀れだからな。
えーっ!イイよそんなの!
逃がした後にすりゃイイじゃん。
どうせ何話したって、ずっと嫌われ虫のままだよコイツなんて!
まあそういってやるな。
こうして人前に出てきた時こそ、ちょうど良い機会だ。
なにしろ姿も撮れるし、その方が話も記憶に残りやすいだろう?
べつにボクは記憶に残したくないんだけど(今撮るっていった?これまた嫌な予感が)。
……どうでも良いけど、逃がさないでね。
ちゃんと見張るから心配するな。
とりあえずその辺のケースの中にでも居てもらおう。
ワシャワシャワシャワシャ!
(うへーきもちわりー)
おぞましい見た目とは裏腹な益虫的存在

無数に生えた細い脚で素早く動き、壁や天井ですら自在にはい回る様相はおぞましく。
ほとんどの人が嫌悪感を持つ(と思われる)いわゆる奇虫だが……。
一方で、ダニやゴキブリ、蚊・コバエ・白アリなどの小型害虫を主食にする、いわば益虫(害虫ハンター)の面を持つ有難い?存在(益虫と断言しづらいのは、衛生・不衛生問わず屋内外の様々な場所に生息することから、けっして清潔な虫とは言い難いため)。
なお和名は「ゲジ」で、漢字で書くと「蚰蜒」。つまりゲジゲジは正式名ではなく俗称。
生物学上は、大まかにムカデ綱>ゲジ亜綱>ゲジ目>ゲジ科となっており、分類上はムカデの親戚ということが分かる。
日本では※ゲジとオオゲジの2種が生息しており、分布は日本のほぼ全域に渡る(ただしこの2種はとりわけ身近なものの一部で、世界規模で見ると約2800種ものゲジが居るらしい)。
※ゲジとオオゲジの主なちがいは以下
〇ゲジ 体長2~3センチ 身体は褐色で胴には黒い筋が縦に流れる(筆者判別だが上の画像はこのゲジだと思われる)
〇オオゲジ 体長4~8センチ 身体は暗褐色で胴に赤い紋がある(ゲジと比べ、オオゲジの方が大型で体色が濃い)全土でみられるゲジとちがい、こちらは関東以南をおもな生息地としている
『豆知識もろもろ』
・ゲジゲジの足の数は左右合わせて30本(片側15本)防衛本能から自分で足を切る(自切)こともあるが、脱皮を行った際に再生する。
・トンボのような複眼を持ち暗闇でも難なく活動できる。
・何気に越冬するため、実は一年中生息している。
・寿命は3~4年ほど、個体によっては5~6年生きることもあるといわれている(同じような扱い⦅不快害虫⦆の虫、クモは大半の種類が1年ほどの寿命といわれ、それと比べると意外に長生きな方である)。
気温と湿気が上がる季節を好み、梅雨から夏場にかけて動きがとりわけ活発になる(その時期にはエサとなる虫が増えることもあってか)。
また夜行性で、日中は石や草の物陰でじっとしていることが多いらしく、夜になると一転してワシャワシャと行動開始するもよう(筆者の体験上でも夜にしか遭遇したことがない)。
屋内に通年で潜んでいることもあり、活動時期には家の中でバッタリ遭遇するなんてことも。
屋外に居る場合でも、窓やドアのわずかなすき間をぬって侵入してくるため、新築の家であるにもかかわらずコイツに遭遇したら、まずそうした侵入経路を疑うべし。
とにかく大半の人にとって気持ち悪い見た目なことは否定できず、遭遇した時にはためらわず退治してしまいがちになるはず。
しかしわずかでも仏心があるなら、出来るだけ外に逃がしてやるのも1つの選択肢ということを付け加えたい。
逃がしてやることで、今度は家の周りの害虫を食べてくれるかもしれないからな。
物は言いようだね……。
そしてほぼ無害
ゲジゲジが人を噛むことはほとんどなく、病原菌なども持っていないといわれているぞ。
少なくとも、コヤツが健康被害を招いたなどという話自体聞いたことがない。
ほぼ人畜無害な虫というワケだな。
今のカエデって完全にゲジゲジサイドで話してるよね……。
あれ?
「ほとんど」ってことは、噛みついてくることがあるの?
稀に噛むらしいな。
というよりも、二本の角状のアゴで挟んでくると言った方が正しいが。
もっとも攻撃というより、危険から身を守るための防御行動として行うようだな(私のように手でつかんだ時とか)。
だが基本的には臆病な虫だから、ツンツンするとたいがいはそのまま逃げていくぞ。
わざと噛まれたいなら、口のところを指でさわれば体験できるだろうが……やってみるか?
ぜったい嫌です。
防御のためっていうのは納得だけど……。
もし噛まれたらどうなるの?
多少は痛いかもしれないが、特に何も起こらないだろうな。
微弱な毒を持つといわれているが、あくまで微弱だ。人間(大型の哺乳類)をどうにかできるようなものではない(仮に猛毒ならそういう類として有名な虫になっているはずだしな)
万一噛まれた場合は、患部をキレイに洗って消毒するだけで充分だろう。
それでも心配なら病院で診てもらうのがまちがいないが、そこまで大げさにしなくても良いと思うぞ。
ふーん……って、なんか安心させようとしてるけど。
嫌いなもんは嫌いだからね。
相容れないよ、ボクとコイツとは。
(猫ってこういうのには普通向かっていくのにな)
付け足しておくが、ゲジゲジの親戚にあたるムカデの方がずっと厄介だと思うぞ。
連中はゲジゲジとちがい大半の種類が攻撃的だから、わりと積極的に噛んでくるしな。
狂暴な虫って感じはするけど。
なんでかボク、ゲジゲジよりムカデの方が平気なんだよな。
それはまたなぜに?
なんかカッケーって思う時あってさ。
……まあそれって、写真や動画で見るから大丈夫ってだけで、実際さわれはしないけどさ。
しかもアレってさ、愛好家とか居たりすんだよね。
※ぺルビアンジャイアントセンチピードって種類の、でっかいムカデを飼ってる人とか居るし。
※こういうやつ↓
Tod Baker from Tianjin, China, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
親戚筋の虫であっても扱いには差があるんだな。
だが大半のムカデは人間にとって危険な虫なんだぞ。
あごの力も強いから噛まれた際の痛みや、毒の強さ(神経毒)もゲジゲジの比ではない。
コイツに噛まれた場合は患部の消毒はもちろん、いよいよ病院で診てもらう方が良いだろうな。
※ムカデに限らず、普段見たことのない虫や「これは危険かも」と思うような虫に刺されたり噛まれたりした場合、可能であればその虫の死骸をビニール袋などに入れて病院へ持参すると、診断の助けになるようです。
やや珍しい状況でクモに噛まれた人のユニーク?体験談。
聞いた流れは次のとおり。
①屋外自販機の釣り銭口に手を入れた際、突然人差し指に「チクッ!」と痛みを感じ、とっさに手を離した。
②指にクモ「黄色い縞模様のある大きめのやつ」(後の話でコガネグモだったことが分かる)がくっついていて半狂乱に。
③振り払った勢いでクモは地面に落下、恐怖のあまりクモをどこかへ蹴飛ばしたらしく、その後行方不明に……(この間の気持ちがすごく分かる)。
③「毒があるんじゃ?」と懸念し、患部をしぼって手洗い&消毒。さらに念のため近場のクリニックへ。
④お医者さんに事の成り行きやクモの特徴を伝えると、確認を兼ねて、PCで該当クモの画像を見せてもらう(特徴をいっただけで向こうはピンときたらしい)。この時コガネグモとほぼ判明。
なお毒性は弱く、人体に大きな影響を与えることもほとんどないらしい。
コガネグモの画像や諸情報は以下を参考 国土交通省九州地方整備局ウェブサイト https://www.qsr.mlit.go.jp/chikugo/siryo/02-kawa/02_yabe/rikujoukontyurui/koganegumo.html
⑤特に心配いらないと診断されるものの、再度消毒をしてもらい「念のため」ということで注射を一本打ってもらって帰宅。そしてその後、体調を崩すこともなかった。
以上だが、相当昔の出来事だったようで、何の注射だったかまでは覚えていないとのこと(内容から察するに抗生物質?)。
ともあれこの体験談を聞いて以来、筆者も屋外の自販機で飲み物を買うときは「虫が潜んでいないか」を警戒して、お釣りが出ないように丁度の小銭を入れる癖がついた(飲み物の取り出し口に潜んでいたら?というツッコミはナシでお願いします。そこまで警戒したら自販機自体が使えなくなってしまうので……)
レアケースとはいえ、実際に起こったことなので皆さんも一応ご注意下さい。
※上記についての補足ですが、もちろんメーカーや設置業者の管理が悪いという話ではなく、あくまで「屋外に設置されている以上、虫が入り込む可能性はある」というだけの話です。
動きもちょっと見てみよう
さて、ゲジゲジの画像と動画を撮ってみるか。
コチョンどの、スマホ貸してくれ。
(予感的中。なにせカエデ、スマホ持ってないんだもんな)
イヤだよ。
ボクのスマホにこんなキモ虫のデータ入れないでよ。
そうか。
あ。
アレなんだ?
え?何?
まさか今度は別なゲj……。
ササッ!
えーっと……どうやって録るんだ?
あっ!奪ったし!(素早いっ!さすがくノ一……)
って、そんな典型的な手にひっかかったボクもボクか……
あーもうイイよ……。
そこをポンってして……そう。
んで、ササってやって、そこの丸いの押して……(横文字苦手なカエデに、タップとかフリックとか言えないのがちょっとめんどい)。
なるほどこうか……ありがとう。
よし、あんまり素早く動くなよー。
ワサワサワサワサ!
どーでもいいけど、ぜったい逃がさないでね。
……よーし、いいぞー、だんだん慣れてきたなー。
そう……足も動かしてみようかー。
……ちょっと失礼するぞ。ちょいちょいっと。コツンっと。
びっくりさせて済まないが、取れ高のために今少し辛抱してくれ。
よし、緊張も解けてきたところで、2つ目いこうかー。
(取れ高って……)
グラビア撮ってんの?
その絵面も気持ち悪いから、ボクちょっと席外すよ。
数分後……。
よし、撮れた録れた。
滅多にこういうことをしないから、楽しいものだな。
グラビア撮影ごくろうさま……。
あまり長く撮ってもゲジゲジの負担になるからな。
適当に切り上げたぞ。
動画は一分弱くらいだが、ちょっと確認してみるか。
せっかくだから、ボクもちょっと見てみようかな。←少し慣れてきた。
よしよし、一応ちゃんと撮れてるな。
40秒くらいから途中でにゅって伸びてくるのは、スプレーノズル(の下の方)だから気にしないでくれ。
たまたま側にあったのを使ってツンツンさせてもらっただけだからな。
(画質の良悪・手ブレ・物音などについては勘弁してほしいが)
なんにしてもやっぱキモイなー。
この経緯で一つ分かったことだが、ゲジゲジは濡れた物の表面を移動することは苦手なようだな。
このプラケースもやや水で濡れていたから、よじ登ろうとしてもすべって落ちてしまっていたからな。
その話、特に役立たない気がするけど……
だが、いくぶん乾いたところからは登れそうだったぞ。
あやうく逃がすところだったが、どうやらこういう表面がすべすべした材質の物でも、距離が短ければ張り付くことが可能な虫ということも分かった。
忍び顔負けの移動力を持っているあたり、虫ながらあっぱれと感じてしまったぞ。
※つまりこーゆーこと→水で濡れた場所ではゲジゲジのグリップ力が低下する。反対にフラットであっても、乾いている面やざらついた面に対しては足が引っかかりやすく、縦横無尽に移動できる。
天井ですらワシャワシャ這いまわれるため、ゴキやクモ同様、重力をある程度無視する能力があることもうかがえる(それを支えているのは、やっぱりあの無数に生えた足のおかげだろう)。
余談だが、さすがに天井にはずっと張り付いていることはできないようで、なにかの拍子でポトリと落ちてきたゲジを筆者は見たことがある(万一、頭に落ちてきていたらと思うと……)。
感心すんなよな……。
万一逃がしてたら、ボクはキミんちから脱出してたトコだったよ。
あと、画像はこういう風に撮ったみたぞ。

どうだ?
大きさの比較も出来て良いだろう!
なぜにライター?
カエデって喫煙者だったっけ?
私が吸ってるの見たことあるか?
コレはもらいものだ。
日常に使うことはなかったが、今回ようやく使いで(用途)があったな。
本来の使い方じゃないけどね。
それよりさ。
こうしてみると、このゲジゲジってまだ小さいよね。
赤ちゃんなのかな?
恐らくそうだな。
成長はしているがまだ幼体だろうな。
それと特徴を見るに、オオゲジではなくゲジの方だろう。
まあ、ボクにとってはどっちも同じようなもんだけど。
……ね、そろそろ逃がしてやったら?
さっきからケースよじ登ろうとしてるし。
ん、そうだな。
……なんだ、ちゃんとゲジゲジのことを考えているじゃないか。
コチョンどのにも「一寸の虫にも五分の魂」の気持ちが湧いたと見える。
(そこから逃げだしたらめっちゃイヤってだけなんだけど)
さて、撮らせてもらってありがとうな!
気をつけていくんだぞー。
「……助かった……ばいばーい」
ワサワサワサワサ……
へ?今なんかいった?
?
いや、なにも言ってないぞ。
なんだろ。
今日は気持ち悪いことだらけだなー。
まとめ
〇見た目はグロテスクなゲジゲジだが、実はダニやゴキブリなどほかの小型害虫を食べる益虫(としての見方もできるが、恐らく大半の人にとってはただの不快害虫)
〇人間を噛むことはほとんどなく、毒も微弱で危険な病原菌の類も持っていないとされる基本的に無害な虫
〇ゲジゲジは俗称で、正式にはゲジ。分類上はムカデの親戚のようなもので、日本に生息する種類はおもにゲジとオオゲジの2種(オオゲジの方が大型で体色が濃い)
さて逃がしてやったところで……。
コチョンどのに知らせたいことがある。
何?
いっとくけど、カエデが撮った画像と動画は消すかんね(こんなんで容量消費するのもイヤだし)。
もしとっときたいなら、USBメモリにでも移し……。
そういう話じゃない。
気付いていないだけで、ほかのゲジゲジたちも実はわりと近くにいたということを教えようと思ってな。
今回コチョンどのがたまたま一匹見つけて騒いだから、ああいう流れになったが。
なにそれどういうこと?
つまりはな。
先ほどのゲジゲジとは別に床にも天井にも、なんならコチョンどのの間近をしれっと通っていったやつもいたからな。
最初こそ余計大騒ぎになるから、あえて言わなかったが、さっきのくだりで少し慣れたと思ってな。
だからもういっても構わないだろうと。
最悪ー!!
むしろ教えてよ!
大体、慣れっこないよあんなの!
あと、キミんち今年ゲジ多くない!?
気のせいだと思うが。
まだ気温も高く湿気もあるし、そういう環境下でゲジゲジを見かけるのはむしろ当然だろう。
それに※少々人里離れたところに住んでるんだから、ゲジに限らず虫の一匹二匹くらい当たり前だ。
※今更ながら設定上のカエデの住まいは、街並からやや離れた場所、山にほど近い小さな古民家ということにしています(田舎にあるような風流なおウチを想像してもらえると良いかもしれません)。
そりゃあ、キミんちで色んな虫に遭遇したけどさ。
ゲジゲジはやっぱ例外!
いくら益虫だろうと、クモとかムカデともなんかちがうんだよ!
特にあのワラワラした足が……あーまた思い出してきた(ゾゾゾゾッ)
あ、また出た。
今度はコチョンどのの頭の上に……
ゲジゲジ「またせたな……!」
キャーーーーーー!!!
(……ってあれ?また声聞こえたけど、さっきしゃべってたのってまさか……)
了。
おもな参考資料
・「アース害虫駆除なんでも辞典」 アース製薬
https://www.earth.jp/gaichu/discovery/geji.html 参照日:2025年9月14日
・日本分類学会連合
https://www.ujssb.org/biospnum/search?Kingdom=Animalia&Phylum=Arthropoda&Subphylum=Mandibulata&Class=Chilopoda&Subclass=Anamorpha&Order=Scutigeromorpha&Family=Scutigeridae 参照日:2025年9月14日
・「どんなも虫にお困りですか?」 イカリ消毒
https://www.ikari.jp/gaicyu/46050d.html 参照日:2025年9月14日
・大阪市立自然史博物館 「自然史博物館によせられた質問(質問番号:439)ゲジについての質問」
https://www2.omnh.jp/scripts/faqbbs.exe?threadN=439 参照日:2025年9月14日
・国際衛生株式会社 「技術資料ゲジ類」
https://www.kokusaieisei.jp/insect-book/pdf/chiopoda.pdf 参照日:2025年9月14日


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