なぜ雷が鳴るとへそを隠すのか

ザーーーーッ!

(どしゃぶりか、これは雷もともなうな……)

(今日は外出せず、本でも読むとするか)

ガララッ!

ねえ! ちょっと雨宿りさせて!

おや、コチョンどの。

大分雨にあたってきたな。

身体を拭いてやるからこっちに……。

ピカッ!……ゴロ…ゴロ……ピッツシャーーン!!

キャーッッ!! ホントマジ雷やだ!!

「ホント・マジ」という同じ意味の言葉が重複しているぞ。

それほどまでにイヤなのは伝わったが。

この際、へそでも隠したらどうだ?

いくらなんでも、そんな迷信みたいなことボクがするワケないじゃん。

でもなんで雷が鳴った時「へそ隠せ」とかいうんだろうね。

私の知る限り、それに関しての由来は1つではないようだぞ。

子供に聞かせるような昔話まであるんだからな。

なぜ雷が鳴るとへそを隠すのか

lighting strike during nighttime
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雷が鳴るとへそを隠すという話には複数の説が存在する。

それは子供の健康のため、雷から身を守るためなどのように理由がはっきりとしたものもあれば、カエデが言ったように、雷とへそに関する昔話まである。

どれがへそ隠しのいきさつとなったかは不明だが、昔話が存在する以上、少なくとも近年生まれた由来ではないと考えられる。

思いやりが込められた迷信

説のなかでも割と有名で現実的なものが子供が腹(ひいては身体だな。)を冷やさないようにするためという話だ。

雷が鳴り雨が降ると、大体の場合は気温が下がる。

そこで昔の大人たちが、冷えによる体調不良を防ぐために「雷さまにへそを取られるぞ」と子供に言い聞かせるようになったという。

なんで雷雨だと気温が下がるの?

気温が下がるのは、雲に太陽光がさえぎられ、さらに雨の気化で周囲の熱が奪われるためだ。

雨の気化は打ち水効果ともいえるが……打ち水は知っているだろう?

真夏に自分んちの庭先とかに水をまくアレ?

そうだ、暑さがひどい場合はそれで涼しさを得られるが、雷が来ると一度に多量の雨も降ることがある。

それこそ真夏は天然の打ち水としてありがたいこともあるが、雨量が多いと周辺の気温はそれに応じて下がることが大半だ。

夏なのに寒さを感じるほどな。

なるほどね。

子供は抵抗力もなさそうだから、気温差についていけずに風邪ひいちゃうかもってことだね。

そういうことだ。

私の経験上でも、雨が降った次の日の朝などは、夏場であってもかなりの寒さを感じることがあるからな。

なんで子供にへそを隠せっていうのか、大分分かってきたよ。

特に就寝時は布団もかけず腹を出したまま寝ると風邪をひく恐れがある。

そんな時の雷雨はさらに冷え込みを招くからな。

だから子供に対して思いやりの声掛けとして、へそを隠すように言い聞かせるのだろう。

ところでさ、これって大人にも当てはまらない?

老若男女関係なく身体を冷やしちゃ毒でしょうに。

大人ならある程度の自己管理は身についているだろう?

小さな子供であればそんなことはあまり気にしないかもしれないし、大人の言うことを素直に聞くとも限らない。

だからこういう迷信を使って、上手く言い聞かせていたのだと思うぞ。

雷から身を守る

雷が本当にへそを取りに来ると仮定してだ。

へそを両手で隠すようにすればどうなる?

ちょっとやってみてくれ。

へ?

えっと……こう?

それで良い。

どうだ、自然と前かがみになるだろう?

そりゃ、なってるけど……。

そういう風に身をかがめることで、身体を低い位置へと持っていくことが出来る。

雷は基本高いところに落ちるからな。

つまりへそを隠そうとすれば、自然と雷から身を守る姿勢になるということだ。

そうなの?

だったらいっそしゃがんだ方が早いような……。

ずっとその場にしゃがみこんでいるワケにいかないだろう。

だが、かがみながら歩くことは出来るはずだ。

つまり姿勢を低くしながら安全な場所へと移動することが可能となる。

そういうことなの?

うむ、そうだと思うぞ。

カエデの考えじゃん。

そう解釈するほかないと思ったからな、この話の場合は。

確かにそんなことをしているあいだにも、さっさと建物の中にでも避難する方が良いだろう。

だが突然の雷に出会ってしまった場合、こういう話も覚えておくのは悪いことではない。

そういうもん?

そういうもんだ。

だが、この話も屋外で雷が鳴りだした際に、子供へ冗談のように言い聞かせたことが始まりなのかも知れないな。

「ほら!雷さまにおへそ盗られるから隠しなさい!」ってところかな。

それこそ冗談とか無意識でいっちゃいそうだけどね。

でもビビって自然とかがむ姿勢になるなら、結果的に子供の身を少しでも守ることにつながってるのかな。

お見事、そういう優しい解釈は好きだぞ。

へその伝説は存在した?

大和の国、現在の奈良県の秋篠寺(あきしのでら)という寺院には、雷やへそに関する不思議な伝説が語り継がれているんだ。

大昔この寺に雷獣が現れ、これを高僧が捕まえ、戒めとしてそのへそを盗り石に封じ込めたという話だ。

アレ? 雷様でもなく雷獣で、しかもそっちがヘソ盗られたんだ?

昔話や言い伝えでの雷は神の化身や、獣のごとくの化け物などの形をとって扱われることが多いだろう。

太鼓を背負った雷神が描かれているように、自然現象を人や獣の存在に見立て、話の題材にするのはよくあることだからな。

この話から雷が自身のヘソを取り戻し自分のものとするために、今度はほかの者のへそを狙うようになったという。

戒められたのに、凝りてないんじゃん。

今でもこの寺には雷獣がへそを盗られ封じ込められた形跡として、かみなり石というものが残っているんだな。

そして私はこういう話から雷がへそを盗りに来るという考え方が生まれたのではと、思っている。

雷とへそにまつわる昔話はほかにもあるが、そのうちの1つが今の雷獣の話というワケだ。

何ごとにもはじまりってあるもんね。

確かにすっげー大昔から伝わってきた話っぽいし、それが元になって広まったっていう風に考えるのもアリかもね。

まとめ

雷雨が気温低下により、お腹を冷やしてしまうのを避ける知恵(言葉)として、大人たちは「雷が鳴るとへそを取られる」と子供に言い聞かせることで体調不良を防ごうとした

②「へそ隠し」は、身を低くして雷から身を守る姿勢につなげるための教訓にもなっている

③昔話の一例として「雷が自分の盗られたヘソを取り返しに来る」というものがあり、こうした言い伝えを通して「へそ隠し」の話が広まったと考えられる

雷が和尚にへそを盗られるという先ほどの昔話があることから、雷が自分のへそを取り戻すため、今度は他者のへそを狙うようになった。

そういう昔話から、今度は子供の健康を守るための教訓が生まれたとするのも、不自然ではないな。

結局どの話も子供のためみたいだね。

大の大人が雷が鳴るたびにへそを隠すってのは、かなり恥ずかしいし。

せいぜい大人なら「くわばらくわばら」って言っちゃうくらいはありそうだけどね。

くわばらについては別な読み物でも話していたものな。

ともあれ、私ならへそを盗れるものなら盗ってみろというところだが。

なんて好戦的な。

雷様がホントに来たらどうすんのさ。

その雷神とやらが現れたら、一戦まじえさせてほしいと思っているぞ。

架空の存在、しかも一応神の類と戦えるのだからそんな経験めったに出来ないぞ。

(あーそういやコイツ、天然&バトルフリークみたいなところもあるんだった)

バトれるの確定みたいにいうのってどうかと思うけど。

……絶対無理だと思うけど、やってみれば?

そうか? じゃ言葉に甘えて……ササッ……。

よっ。

……「よっ」じゃなくてさ、つうか、頭おかしいの?

なんで下からたくし上げるんだよ。

へそってか、パン〇丸見え。

んあ?

へそを出すには一旦、帯をほどかなくてはならない。

こうした方が手っ取り早いだろう。

そっか!

……いやそうじゃなくて!

そもそもホントにやるなんて思わなかったし!

ダメ元で試してみるのも一興だろう。

さあ! 天界におわす雷の化身よ!

私のへそを盗りに来い! そして一戦、御指南頂いただきたい!!

ザーーーーッ!

ねえー! バカなのー!?

(酔っぱらってるワケじゃないよな?)

雷さま「……あの娘、この豪雨の中一体何やってんだ? ……怖えから無視しとこ」

了。

参考資料

国際日本文化研究センター 怪異・妖怪伝承データベース https://www.nichibun.ac.jp/cgi-bin/YoukaiDB3/youkai_card.cgi?ID=0690232(参照2024-10-29)

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