カエデ! 突然だけど赤ちゃんってどこからやって来ると思う?
身ごもった女体からだろう。
なんと夢のない! 今回の読み物に合わせてもう少し物語チックな答えを期待してたんだけどなー。
あのさ、コウノトリが赤ちゃんを子供の居ない夫婦のところに運んでくるって話は聞いたことない?
ん-ん。
まったく知らん。
鳥が人間の赤子を運ぶとでもいうのか?
人間をエサとでもみなさない限り、ありえないと思うが。
そういうグロい話じゃなくてさ。
コウノトリが赤ちゃんを運んでくるっていう話は一説だと童話が元になっているんだって。
ちなみにその童話の作者はけっこう有名な人だよ。子供のころ絵本を読んだことがある人は、なじみがあると思うんだ。
それとその話以外にも別説があったから後々ふれていくね。
説その① ある童話が元
コウノトリが赤ん坊を運んでくるという話は、ヨーロッパの童話作者・アンデルセンが創作した沼の王の娘が由来。
作中では子供のいない※ヴァイキングの奥さんに、コウノトリが赤ちゃんを運んでくる場面がある。
※ヨーロッパの海賊または、武装集団(と、いうのは後世の見方でじつは普通の交易民や漁師であったともされている)イメージ的にはツノ兜をかぶって斧をもったオッサン戦士。FF3とかのジョブとしても出てくる。
童話のほんの一部が由来と関係
沼の王の娘はたくさんの童話をつくったアンデルセンの作品の1つだよ。
話の中では子供のいないヴァイキングの奥さんに、沼の王とエジプトの王女とのあいだに産まれた子供をコウノトリが届けるって場面があるんだ。
コウノトリの出番自体はそれだけか?
由来に関係してそうだと言っても、登場するのはほんの少しなのだな。
長めの童話だし関係なさそうなほかの部分についてははぶこうと思ったけど、コウノトリの出番はそれだけじゃないよ。
物語の途中で空を飛ぶために必要な白鳥の毛皮を悪者から取り戻してくれるみたいなんだ。
ふむ、なかなか細やかな内容のようだな。
それはそうとさっきのくだりがコウノトリが赤子を運んでくる由来の出どころというワケか。
うん。そして童話がなぜコウノトリ伝説と関係あるのかだね。
先に言っとくけど人々のあいだでいつ浸透した話なのかまではわからなかった。
だからここからはボクの推測になるんだけどさ。
でも納得がいきそうな話をしようと思うから、ひとつの答えとして聞いてね。
現実では親が幼い自分の子供に保健体育的なことを聞かれた時に、童話中でのコウノトリと赤ちゃんの部分を利用しはじめたのが元じゃないかと思ってるんだ。
子供に「赤ちゃんってどこからくるの?」っていきなり聞かれたら、親は多分あせるしホントのことを聞かせてもまだピンとこない時期だったらどうする?
で、あえて「ぼやかして」伝えるのに、コウノトリが赤ん坊を運んでくる話はうってつけだった。
後々そのことをちゃんと学ぶとしても、教えるにはまだ早すぎると思った時期のくるしまぎれの方法としてね。
物心つく前の子供にたいしての気配りといったところか。
わからなくもないが。
それに童話の出どころとされている北ヨーロッパの方だと、コウノトリが産まれる前の赤ちゃんの魂を親の元に運んでくるっていう考え方があったり、民家の上をコウノトリが飛ぶと赤ちゃんが産まれる兆しに見られたりしているんだ。
ほかには赤ん坊の泉の神様の使いって見方もあるよ。
なんだか神話よりの話になってきたね。
アンデルセンがどこから着想を得たのかわからないけど、現実コウノトリと赤ちゃんとの間に、なにかと関わりがあるっていう話だけは本当みたいだね。
説その② 鳥の種類がちがうけど……
一方では「シュバシコウ」という鳥が、赤ん坊と幸福を運んでくるという言い伝えがある。
またコウノトリとシュバシコウは見た目がほぼちがわないことがわかった(クチバシの色で見分ける方法はあるが、くわしくは次の見出しから)。
シュバシコウとコウノトリのちがい
今度は鳥ちがいか。
段々と話の収拾がつかなくなってきたが。
筆者もけっこう混乱したみたい。
まずはっきりしているのはシュバシコウがコウノトリの仲間ってこと。
別名・ヨーロッパコウノトリとも呼ばれるね。
分類上はコウノトリ目・コウノトリ科の渡り鳥で、おもな生息地が北アフリカと中近東。繁殖の季節にはヨーロッパに渡って来るんだ。
見た目もコウノトリにすごく似ていて、見分ける簡単な方法はクチバシの色だよ。
黒っぽいのがコウノトリで、赤っぽいのがシュバシコウだね。
あと、YouTubeで見つけたシュバシコウとコウノトリ、それぞれの動画を下の方に貼らせていただいたよ。
最初の動画がシュバシコウで、次のがコウノトリのだよっ。
ちなみに、コウノトリの動画の方では「クラッタリング」って仲間同士でコミュニケーションを取る行動も見られるよ!
クチバシの色で見分けられるのが救いか。
確かに、それ以外で見分けるのは専門家でもないと困難かも知れないな!
あとシュバシコウはドイツやリトアニアの国鳥にもなっているんだ。
国鳥に定められているだけあって、子供を授けてくれる幸運の鳥っていう見方はやっぱりその国周辺が発祥なんじゃないかな?
春先から民家の屋根とかにたびたび巣作りをすることもあるんだって。
日本でのスズメとかツバメのようなものだな。
こんなこと言ってはなんだが駆除の対象にはならないのか?
そんな扱いの鳥じゃないみたいだよ。
駆除しちゃダメだっていう考え方が関係してるのか、ドイツの一部ではある伝説が存在するんだ。
それはある老夫婦の家の煙突に住み着いたシュバシコウがヒナを産んだ後、長い間子宝に恵まれなくて困っていた夫婦に子供が出来たって話さ。
だからヨーロッパではシュバシコウが幸運を運んでくる鳥としてみられるようになったんだ。
もし家に巣をつくっても、追いはらわずに見守る風習が出来上がったんだって。
まさしく幸運の鳥だな!
なにか特別に悪さをしなければ、縁起の良い鳥として、もてはやされるのもわかる気がするぞ。
家に巣をつくるくらいなら可愛いもんだよね。
もう1つ、ドイツの一部地域での言い伝えもあるよ。シュバシコウは良い子供を背にのせて運んで、悪い子供はクチバシでくわえて運ぶっていう話さ。
ユニークな話だけど親がもしクチバシに子供をくわえてきたシュバシコウを見られるとしたら「悪い子確定かよ……」ってなるかも知れないね!
まあ産まれる前から悪い子なんてこの世にいないだろうけどさ。
いわゆる性善説ってやつで。
まとめ
- コウノトリが赤ん坊を運んでくるという説の1つは、アンデルセン童話の「沼の王の娘」が元になった
- 別説ではシュバシコウという鳥が、赤ん坊や幸運を授けてくれるという民間での言い伝えがヨーロッパに存在する
- コウノトリとシュバシコウは、同じコウノトリ科目であり見た目も似ている。見分け方はクチバシが赤い方がシュバシコウで、黒い方がコウノトリ
説の重要な話をするから、もすこし付き合ってね。っていっても、またボクなりのちょっとした考察みたいなものだけど。
結局、どっちの説が「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」の由来になったかはわからなかった。もしかしたらまだほかの説もあるのかもしれないけどね。
あくまで有名な説がこの2つだったんだよね。
でもボクは2つ目のシュバシコウ=コウノトリの話が出どころとして有力だと考えているよ。
さっきシュバシコウは別名ヨーロッパコウノトリって呼ばれるって言ったよね?
うむ、シュバシコウとはようするにコウノトリの亜種ということだろう。
それがどうかしたのか?
こっちで知られるコウノトリって実はヨーロッパに生息していない鳥なんだ。
もしコウノトリがヨーロッパにもいるんだったら、わざわざ名前に「ヨーロッパ」なんて付けないでしょ。
つまり赤ちゃんの話の「コウノトリ」は「シュバシコウ」なんだよ。
この2種類の分布を調べてわかったことだけどね。
コウノトリのおもな分布地域は東アジアとロシアなんだ。一方で北アフリカとヨーロッパが分布地域のシュバシコウとは生息域がまったくちがうんだよ。
おお、確かに!
となると、本来はシュバシコウが赤子を運んでくるという話以外あり得ないのだな。
そう! だから、同じヨーロッパ出身のアンデルセンの童話に出てくるコウノトリも、シュバシコウ(ヨーロッパコウノトリ)と思うのが自然だよ。
そして、親が子供に赤ちゃんがどこからやって来るの説明をする時も、ヨーロッパでははじめからシュバシコウのことを言っていたんじゃないかと思うんだよね。
さらに日本に言い伝えが広まった時に、向こうではシュバシコウだったのがいつのまにか話が混じり合ってコウノトリになったって考えられないかな?
日本に飛来するのは分類上のコウノトリの方だし、こうしてなじみ深い鳥のほうへと移ったという仮説さ。
ほかにも要素はあるかも知れないが、1つの見方としてありだな。
に、してもこのコウノトリの話はおもむきがあるな。祝福を運んでくる鳥として見れば、それだけで印象も変わってくるものだ。
ところでさ。いつになるかわからないけど、将来カエデに赤ちゃんができたとして、どういう子供に育ってほしい?
うーん……自分に子供が出来るなど想像もしていないが、とりあえずは忍びとして充分な働きが出来るよう、強靭(きょうじん)な肉体と精神の持ち主に育て上げたいな。
男か女かわからんが、いずれにしても私相手に片手でも勝てるようになれば良いと思うぞ。
そうですか……とてつもない戦闘狂になりそうだね……。
了。
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