煮ても焼いても……大根役者とは

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久しぶりに歌舞伎を見にいったが、やはり※勧進帳(かんじんちょう)は良いな。

弁慶が心ならずも義経を打ちすえる場面などは、見ていて思わず胸が詰まる……。

コチョンどのは、どうだった?

※源平の合戦で活躍した源義経と、義経の忠臣・弁慶による関所越えの一幕が題材の名作歌舞伎

あーそうだねーすごい迫力だったよー。

なんだ。

あまり楽しめなかったようだな。

だってなにしゃべってるか、全然分かんないんだもん。

なんかさ、時代劇で聞くような小難しいセリフを「にょわいにょわい」って間延びさせてるみたいに聞こえるんだよ。

みんなの顔も白くて、なんか怖いし。

(にょわいにょわい?)

歌舞伎とはそういうものなんだが、コチョンどのには分からないか?

白紙の勧進帳を読み上げる弁慶の鬼気迫る様相!打ち据えられる義経の耐え忍ぶ様!それを見やる関所代官の心情が!

熱あるねえ。

ボクはマンガとかアニメとか、そういう分かりやすいので良いよ。

何てもったいないことを!

もっとも近年はコチョンどののような者でも楽しめるように、サブカル作品とコラボしたものも作られる様になったし、敷居も下がっているのだが。

いやまあ、そういうのも分かるけど、ちょっと入り込めないというか。

だいだい歌舞伎というのは、何代にも渡って受け継がれた日本の伝統そのものだ。

過酷な稽古によって洗練された深みのある演技が、直に見られる貴重なもので、そこいらの大根役者がやっているものとは次元がちがう。

歴史の長さもあって、能楽や人形浄瑠璃とともに、国の無形文化遺産にも指定されているほどだぞ。

そもそもの歌舞伎のはじまりはな、出雲阿国という人物が、クドクド……

(コイツってこんな歌舞伎好きだっけ?)

大根役者ね……。

その役者が誰か分かんないけど、その表現って失礼なんじゃ。

名前をいっていないから、いいだろう。

それにだれかということでなく、ただの物のたとえだ。

そもそも大根役者とは、大根の特徴を上手く当てはめた面白い言葉なんだぞ。

当たらないから大根役者

青首大根の絵

大根役者とは、縁起が下手で人気の出ない役者のこと。

大根 藝の拙なる役者を嘲りていふ語。だいこやくしゃ。

上田万年, 松井簡治 著『大日本国語辞典』第3巻す〜な,金港堂書籍,大正6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/954647 (参照 2024-06-06).372p,大根の項目内より一部抜粋.

※藝(芸)

なぜ大根を使った言葉なのかは、そもそも大根は煮ても焼いても(どんな食べ方をしても)あたらない(お腹を壊さない)特徴を持っているから。

これを下手な役者は人気が出ない(当たらない)ことに当てはめたのが、言葉の由来になっている。

また大根には消化を助ける成分がふくまれるため、これもお腹をこわさないという特徴に一役買っていると考えられる。

余計なお世話かもしれないが、どんな食べ物でも食べ過ぎは腹痛の元になる。

いくら大根の消化が良くても、限度というものがあることを付け加えたい。

ほかにも意味が

大根は白いから、素人の「しろ」というように、素人同然の演技しか出来ない役者を指す意味もあるんだ。

大根 大根の根は白きより素人(シロウト)のしろに寄せていふ

上田万年, 松井簡治 著『大日本国語辞典』第3巻す〜な,金港堂書籍,大正6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/954647 (参照 2024-06-06).372p,大根の項目内より一部抜粋.

意味が広がったね。

どれもこれも、口の悪そうな江戸っ子が流行らせていそうな感じだけど。

それとな、大根は根も葉も捨てることなく、すべて食べられるという特徴から「捨てるところがない良い役者」という別な意味もあるんだ。

むしろ、これが本来の意味という話すらあるほどだ。

これだと悪口ではなくほめ言葉になるのだな。

似た言葉はある動物の部位

似たような意味で、馬の脚という言葉がある。

こと大衆演劇では作り物の馬をかぶって前後の両足の動きを演じる者は、その一座の中でも下の役者が演じることが多いとされていた。

それで馬の脚という言葉自体が、下手な役者や売れない役者を意味するものに変わっていったようだ。

ふうん、いつぐらいから使われ始めたんだろうね。

どっちにしても、いわれた側は良い気分にはならないだろうけど。

確証となる話は見つからなかったが、そうした演芸が町民の娯楽として流行った江戸時代あたりと思っていいだろう。

こと江戸の民、つまり江戸っ子は「べらんめえ口調」というだけあって、パッと聞いても口の悪い者が少なくない。

古典落語にもあるように、シャレっ気を好む文化もあっただろうから「さげすみながらも上手い」言葉が江戸の町民から生まれたんだろうな。

「このヘタクソ!大根役者!馬の脚!役者やめちまえ!!」

みたいな?

アハハハ! 上手いぞ!

そんな感じの言葉も、当時の役者に飛んでいたかもしれないな。

まとめ

①大根役者とは人気が出ない役者という意味。これは大根をどういう風に食べてもお腹をこわさない(あたらない)という特徴から発生した言葉

②大根は白いから、素人(芸のシロウト)とかけた意味もあるほか、演劇の一座で下の役者が演じることから派生した「馬の脚」という売れない役者を指す言葉も存在する

③大根は根も葉の部分も食べられて、捨てるところがないことから、何をやらせても捨てるところがない上手な役者というプラスイメージな意味もある

悪い意味であったり良き意味であったり、解釈はさまざまということだな。

悪い意味で大根役者呼ばわりされた者が、より稽古を積み、良き意味での大根役者になれることが一番良いのだろうが。

でも「大根役者!」っていわれたら、演技を専門にする大体の人は、バカにしてるって思うかもしれないね。

だってとても誉め言葉には聞こえないもん。

ムリもないな。

我々は俳優ではないのだし、現代でこの言葉を耳にする機会もそうないだろうから、あまり関係はないがな。

さて、歌舞伎も見て時間もあまったところで、すこし空腹になってきたな。

大根って話出たから、なんかおでんが食べたくなってきたよ。

お出汁しみしみの大根とか。

なら手前味噌だが、私が作ってやった方が良いかもしれないな。

味噌といったところで、味噌おでんというのも悪くないぞ。

どっちでも美味しそうだからいいよ。

それなら外で食べるよりも断然安上がりだから、ボクもおこづかいがういて助かるな。

……外食のおでんって大根1個でも100円くらいするから、ちょっと高くつくんだよね。

しかも輪切りの1個だけでさ、なんであんな高いんだろうね。

費用を工面するためや、何十年も出汁を継ぎ足しているなど、店によって理由はさまざまだろうがな(出汁の味はこだわりでもなければ、どこも似かよっているが)。

私だって輪切りの大根一個に、いちいち100円出していては死活問題になる。

もっともほぼ自給自足の身ゆえ、それほど外食代がかからないのが救いだが……(とはいえ、私だってたまには外で食べたいが)。

大根みたいな野菜の具はともかく、タコとかツブとかホタテとかの海鮮系になるともっとヤバいよね。

前に縁日屋台で見たとき、値段に目、飛び出たもん。

そのあたりの種ものは一串・700~800円くらいか。

縁日のためにあらかじめ貯蓄でもしていないと、やすやすと手が出せないな。

雰囲気や場所に、お金を払うことを惜しまない人だったら良いんだろうけど。

ボクたちボンビー庶民にはキッツイよねー。

……まー高いよね!

ねー!

ねー!

(そこに金を使うことを、さげすんでいるワケではないのを、心の中で付け加えておくか)

了。

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